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□状態：NGC-AU55(EF)

ミャンマー最初期の金貨の一つです。1800年代のアジアはヨーロッパのコイン文化がようやく入ってきた時代で、銘柄の数自体わずかしかありません。一方で近年のアジア経済の急成長に伴って日本や中国はもちろん発行国においてもコインへの投資が広がりつつあります。近年急速にアジアコインの相場が上がりつつありますが、この時代のミャンマーコインもここ数年で随分と値を上げてきた印象です。その代表は本貨とほぼ同時代に発行された、クジャクが描かれた1キャット銀貨です。10年ほど前までは1枚数千円も出せば手に入りましたが、今では状態の良いものなら50万円を超えるオークションアイテムになってしまいました。
このコインは3グラムに満たない小型の金貨ですが、ミャンマー最初期の金貨の一つです。この上に2倍のサイズの5Mu金貨がありますが、そちらは超希少で市場に出てくることはまずないので、本貨は実質的に手に入る1800年代唯一の金貨といってよいでしょう。
 
さてこのコインです。今でもミャンマーの大きな寺院の入り口には、日本の狛犬のような2頭のライオン像がおかれていますが、オモテ面に描かれたライオンはそのTemple Lionで、同国では神聖な動物と考えられているようです。ライオン像の周囲に打たれたミャンマー文字は「チンディ」と読みライオンを意味する言葉です。ライオンの下にはミャンマー歴1228年の文字があります。ウラ面の稲穂の内側には本貨の重さを表す「2ユエ（Mu）1ペ（Pe）」の文字が打たれており、稲穂の周囲には当時の首都ネピドーの文字が見えます。ミャンマーは本貨が発行された1866年から20年あとにイギリスの植民地になりますが、本貨はそれ以前に発行された数少ないミャンマー独自の金貨です。
 
状態はNGCの評価でAU55とマズマズです。そもそも発行量が少なかったようで、NGC社の「数字付鑑定済みコイン」も僅か18枚しかありません。同社の鑑定分布は最高鑑定のMS63(1枚)を筆頭に、MS62が3枚、以下AU58が4枚、AU55の3枚と続きます。AU53以下は7枚ですが、「数字なしDetail評価」の個体が12枚ありますので、それを含めると本貨は総鑑定数30枚のうち上位11枚となります。
 
近年のアジアコインをみますと、銘柄数や残存数の少なさに反して、アジア経済の成長に伴う需要が急速に増えているようにみえます。本貨も上記のように鑑定数が少ないので、おそらく市場での残存数も相当少ないのではないかと思います。ミャンマー人の収集に加え今後は日本や中国人によるカイも強まるのではないでしょうか。同時代の孔雀が描かれたキャットは市場によく出てくるので、その値上がり傾向を私たちがよく目にしますが、本銘柄は市場になかなかでないこともあり、その相場上昇を目にする機会は多くはありません。でも注意してみると同時代のアジア金貨と同様、本銘柄の相場上昇も明らかで、少々値は張りますが持っておかれて損はないコインです。